CANTINA - ワイナリー -

テヌータ・ヴィンチェンツォ・ナルドーネ
4代目 二コラ・ナルドーネ


2012年、家業の有機農法へ移行を主導していた3代目ヴィンチェンツォ(兄)から、フランス西部のワイナリーで経験を積んでいた、二コラが家業を継ぐことになり、新たな一歩を踏み出しました。

2014年にヴィンチェンツォ(兄)が2008年から準備していた太陽光発電を備えた地下セラーで、サステナブルで革新的なワイナリーを完成させました。

ここから、祖父の代から使われていた小さな醸造所では実現できなかった温度管理と熟成環境を整えることで、より一層テロワールを表現できるワイン造りへと日々進化させています。

進化の中でたどり着いたビジョン長期熟成

二コラ自身の進化の中でたどり着いた、
重要ビジョンが"長期熟成"へのこだわり。

テロワールのシリーズは赤ワインは最低8年、白でも3年以上の熟成期間を経てリリースされるものもあります。

イタリア南部では珍しいこのスタイルだが、これまでのニコラ自身の探求と進化の結晶であり、彼にとっては「テロワールの本質を語るために必要な時間」だと考えています。

Tenuta Vincenzo Nardone
テヌータ・ヴィンチェンツォ・ナルドーネ

南イタリア・カンパニア州の内陸部、標高400~700mの高地に位置するイルピニア地方の高地に佇む小さな村ヴェンティカーノ。この地に150年の時を刻む家族経営のワイナリー「テヌータ・ヴィンチェンツォ・ナルドーネ」があります。

家族の記憶と共に生きるワイナリー

1799年にヴェンティカーノがフランス軍に破壊され、第二次世界大戦や経済危機など、2度の大地震災害を乗り越えながらも、ナルドーネ家はこの土地と共に生きてきました。

150年以上前は、農業を生業としていましたが、1908年二コラの祖父ヴィンチェンツォが現在のワイナリー始動させました。

牛馬で畑を耕し、ワインは地元消費とピエモンテやフランスへのバルク出荷が主でしたが、戦後に機械化が進み、畜産やタバコ栽培なども導入してきました。

その中でも、アリアニコを中心としたブドウ畑は一貫して守られ、ヴェンティカーノを囲むカローレ川沿いは、昼夜の寒暖差が大きく独自の微気候があり、アリアニコ栽培に理想的な環境となりました。

本来のエネルギーを最大限に表現された葡萄造り

現在、葡萄畑、オリーブ畑など栽培面積は約15.6ha。

アリアニコ、グレコ、フィアーノ、コーダ・ディ・ヴォルペ、ファランギーナなどの土着品種を中心に、多様性豊かな畑が広がっています。

平均樹齢は35年、最も古いもので85年にも及ぶ古木が、深みとミネラル感をワインにもたらしています。

農法はすべてビオディナミおよび有機農法。

畑には果樹や生け垣が自然のままに共生し、多様な生物が循環する“オーガニック・フォレスト”が形成されています。

  • アリアニコ
  • ファランギーナ
  • コーダ・ディ・ヴォルぺ
  • フィアーノ

熟成するにつれて変化していくグレコ

野生酵母による発酵、無濾過・無清澄、亜硫酸添加はせず、ブドウそのものが持つエネルギーを最大限に表現するためです。

醸造において何よりも重視しているのは、「自然な流れを軽やかに導くこと」。ぶどうが持つポテンシャルを引き出すために、人為的な介入は極力避け、畑での作業から瓶詰めまで一貫して丁寧に行われています。

自然な造りと、感性と理性を織り交ぜた葡萄

ただ「自然に造る」だけでなく、土地とや文化、人が切り離されているようなワイン造りは、本質的ではないと考えています。

二コラは土地と自然のリズムに寄り添う「感性と理性の共存」を目指しています。

畑のことを語るとき、「ピオロジック(有機農法)」や「ビオディナミ(自然循環農法)」は欠かせません。

そして、ブドウの木の剪定(せんてい)もとても重要です。木が長生きできるように、丁寧に扱うことで、歴史・文化・土壌・気候・この土地で生きる人々が一体となり、本当に個性ある「テロワールの味」が生まれています。

二コラが本人が語ってくれた
「自然なワイン造りとは、ただの放任ではない。感性と理性が重なり合う場所に、唯一無二のワインが生まれる。」
その言葉に、世代を超えて受け継がれてきた知恵と、土地への深い愛情が伝わってくるワインです。

ITEM

ヴェンティカーノワイン文化理想的な風土

歴史の中で育まれた、ヴェンティカーノのワイン文化

カンパニア州にはおよそ2600年ものブドウ栽培の歴史がありますが、「ワイン文化」が体系的に始まったのは、イルピニア地方、特にヴェンティカーノだったと考えられています。

西暦850年頃、この地にはベネディクト会の修道院がありました。彼らは宗教儀式だけでなく日常の食事でも必ずワインを飲む習慣を持ち、1日3回のミサではその都度ワインが使われていました。そのため、地元での安定したワイン生産が必要だったのです。

ロンゴバルド族の影響によってビール文化から導入された「木樽」がワインの熟成にも使われるようになり、やがてイルピニアには中世から近代へと続くワイン造りの伝統が根付きます。

ローマ時代には主要な交易路がこの地を通っており、橋や遺構からも人とワインの往来が活発だったことがうかがえます。

そして1500年代以降、アリアニコやグレコ、フィアーノといった品種の価値が認められ、教会と農民によるブドウ栽培の組織化が進んでいきました。

260年以上前のブドウの木が今も生き残る畑もあり、ヴェンティカーノがいかに早くから“現代的なブドウ栽培”の地として確立されていたかを物語っています。

ヴェンティカーノの風土が生む、冷涼さと力強さ

イルピニア地方は南イタリアにありながら、内陸性気候。昼夜の寒暖差が非常に大きく、標高400~700mの高地に位置し、周囲の山々に囲まれることで冷涼な気候が形成されています。

この気温は、糖度と酸味のバランスの取れた成熟プロセスに理想的で、高品質なワインの生産を可能にしています。

私たちの土地は北向きで、南には「モンテ・トゥオーロ」という大きな山があり、そこが南側からの熱風を防いでくれます。

そのため、気候的に非常に恵まれた場所と言えます。サレルノ湾からの風を防ぐピチェンティーニ山脈、ナポリ湾からの風を防ぐパルテニオ山脈など、周囲の山々が独特なマイクロクライメート(微気候)を作り出しています。

さらに、この地域は2本の川によって分かれています。赤ワインのアリア―ニコD.O.C.を貫く「カローレ川」と、グレーコとフィアーノのD.O.C.を分ける「サバート川」です。これらの川はそれぞれベネヴェント方面へ流れ、最終的にはヴォルトゥルノ川で合流して海へと流れ込みます。

このように、地形や水系、そして気候が複雑に絡み合い、多様で魅力的なワインの産地を形成しているのです。

年間降水量も800mm程度と限られています。降水の分布は、秋から冬にかけて集中しており、年間降水量の70%以上がこの時期に降ります。


夏季は特に乾燥しており、年間の降水量のうち平均でわずか6%しか降りません。

土壌はかつて海底だった為、海底堆積物からなる石灰質に富み、炭酸カルシウムを豊富に含み、さらに火山性ミネラルをも含んだ非常に個性的なもの。

また「ブルゴーニュのような土壌構成」とニコラが語るように、ひとつの村の中でも畑ごとにワインの表情が大きく変わるのも特徴的です。